視覚情報の暴力
こういう仕事こそが最も大事なのだ。全ての歴史学がそうであるように、美術史とは、過去をよく理解しその延長線上の現代を知り、未来を考えるために存在する。ルネサンス美術に造詣の深い若桑氏らしく、いわゆる聖母子像との関連づけもきちんと為されており、興味深い。大体国家が「母性」だの「家族」だの言い出すとろくなことがない。放置しておけば、「婦人は同僚でもなければ 愛人でもなく、ただ母たるのみ」などと言い出しかねない。 筆者が炙り出す滑稽にして哀れで不気味な「女性像」は、過去の我々の檻であると同時に現在の我々の檻である。女権拡張運動をやっていた人々が絡めとられてゆく姿がとても哀しい。今の私たちだって、うっかり嵌りそうな罠ではないか。 殺す側に荷担しない為に。私的な大切な人間関係を「家族制度」「国家」に絡めとられない為に。無自覚に暴力を振るわない為に。 無自覚のままに大量のグラフィックイメージやコピーに晒されている現代、判断力を失わない為に必読といえる。極めて良書。
筑摩書房
国防婦人会―日の丸とカッポウ着 (岩波新書) お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門 (ちくま新書) 戦争とジェンダー―戦争を起こす男性同盟と平和を創るジェンダー理論 (Somo‐somo sosyo) 聖母像の到来 象徴としての女性像―ジェンダー史から見た家父長制社会における女性表象
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