「軍隊」という「文化」の再考
中国に「洗脳」されていると、帰国後レッテルを貼られた中帰連の人々への取材を通して、戦時中の日本軍が他国で行った蛮行を、一人一人がいかに忘却し、あるいは罪の意識に目覚めたかを明らかにしている好著。 「戦争だったのだから仕方ない」「命令だったのだから仕方ない」というには、あまりにひどいことをしていながら、戦後においても「軍人恩給」をもらい続ける人々、そして恩給を支払い続ける戦後の日本社会を筆者は痛烈に撃つ。 戦前も戦後も日本は何も変わっていないではないか! また罪を自覚しないための「装置」を、本書は明らかにしている。 一つは言語による操作。対象を「人」と呼ばず、「猿」「豚」などの呼称をもちいることによって、一人の人間を惨殺するという意識を排除する。 もう一つは対象の「顔」を見ないこと。目隠しをして、刺殺、惨殺するのはそのためだ。 戦時のおのれの蛮行を自覚し始めた人でさえ、相手の顔を思い出せないがために、相手の「悲しみ」を想像し、共苦することがいかに困難をきわめるかが詳述される。 これは現代の「戦争」とまったく同じだ。 いわゆる「イラク戦争」で殺された人々の「顔」を私たちは、知らない。 そこはアメリカやそれに追従するメディアによって慎重に隠されたのだ。 他者の「痛み」「苦しみ」、すなわち他者の「個」を考えさせないためには上記の操作は不可欠なのだ。 それともう一つ。 「軍隊」という場所になじめずに精神に異常をきたしていた人々がかなりの数、いたのではないかという言及がある。これは私にとって貴重だった。 「軍隊」という集団の「文化」に再考を迫る一冊。
日本人として忘れてはならないもの
これは、とにかく、日本人が読むべき本だと思った。第二次大戦下におかれている、アジア諸国で、日本人がなにをしたかを克明に描きながら、なおそれだけにとどまらず、個人としての行為を精神科医である著者が、分析する。私が、驚いたのは、多くの戦犯として、多くの国々で死刑を下されたにもかかわらず、中国では、一人の死刑の戦犯を出さなかったことである。そして、罪を許された、戦犯のその後の人生も考えさせられる。
無知を恥じた瞬間
この本は満州や中国の話を知ると言う目的で読んだのではなかった。ただ「日本人は戦争に対して罪悪感をあまり持たない」という趣の何かの件りにあった本の紹介を観て、その指し示す処を知りたかっただけであった。 しかし、実際には中国で日本人が何をしてきたのか、自分たちが何も知らされていなかったという事と同時に、それらが故意に隠されたり否定されて尚も現在に続いている事を知った。 罪悪感の欠如は端的には「人の痛みが分からない」という言葉に集約出来るであろうが、それが日本人には内向的にしか用いられなかったのではなかろうかと思う。 この本では現代日本人までもが未だ感じきれない「人の痛み」を戦時の日本人の行為とその心理プロット、そして今も傷つく中国人遺族の姿を!逡?じて伝えようとしている。 「人の痛み」を知らされなかったのではない。知ろうとしていないのである。
岩波書店
この社会の歪みについて―自閉する青年、疲弊する大人 背後にある思考 させられる教育―思考途絶する教師たち 沈黙を破る―元イスラエル軍将兵が語る“占領” 喪の途上にて―大事故遺族の悲哀の研究
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